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2005年英国薬害啓発家チャールズ・メダワー氏の講演から製薬業界を見る

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私は患者が薬の副作用を訴えても医師が科学的根拠もなしに副作用を認めない事実を自分の経験や大勢の当事者体験談から目の当たりにしてきましたが、ずっと以前からイギリスでも同様と言うことがわかりました。多分世界中で同様なのでしょう。
今回、2005年と古いですがイギリスの薬害啓発家チャールズ・メダワー氏が薬害オンブズパースン会議と浜六郎氏。別府宏圀氏のTIP「正しい治療と薬の情報」誌共催セミナーで来日されたときの講演録を見つけたので一部紹介します。

離脱症状(服薬中に薬物依存が形成されてしまい、薬を飲んでる最中または減断薬すると不都合な症状が現れること)は元の症状の再燃であり、薬のおかげで今まで症状が抑えられていたという解釈、患者も医師も政府も薬が効いて欲しい願望から「善意の隠謀」が働いてしまうこと、昔から変わらない業界の隠ぺい体質、非合理な薬開発の実態について指摘されています。

講演録PDF19ページ

スライド

ここから抜粋

@1

医療に携わる人々も患者さんから学ぶところがたくさんある

@2

政府としては、その管理下において薬害問題が生じることを何よりも 避けたいと思っています。政府は薬物の安全性に関して責任を負う立場にあるため、もし 薬のことで何か問題でも起きようものなら彼らが非難されるからです。だからこそ薬の安 全性と効果の問題は非常に秘密裏に扱われるのです。医薬品規制当局から情報を得ようとするのは、私の経験からすると、ほとんど不可能です。

@3

WHO(世界保健機構)が先月が出した新聞 発表によると、入院件数のすべてのうち 10 %が薬害を含む医原性の害による入院だとい う発表でした。

@4

1980 年代中ごろ、私は初期 のパノラマと、ベンゾジアゼピン系精神安定薬の依存の危険性に関する訴訟問題との両方 に関わっていました。ベンゾジアゼピンは 1959 年に初めて英国で承認されましたが、こ の薬には離脱症状を引き起こす事実があり、問題だという臨床試験報告が最初に公表され たのは、22 年後のことでした。ほぼ 1983 年まで、医薬品規制当局および処方医は、この 薬を飲んで人々が離脱症状を引き起こすことはない(あるいは、嗜癖を引き起こす傾向は ない)と思い込んでいました。例えば患者さんがこの薬の服用を止めた時に状態が悪くな るというのはまさに薬が効いていたという証拠だと推測され、また、他の患者さんが服用拠だから 薬は続けるべきだと解釈されてしまったのです。このようにして医者が薬の服用を続ける ように指示した結果、依存はさらに進行していったわけです。私は 1992 年にこの問題を 扱った「権力と依存」(Power and Dependence)という題名の本を書きましたが、これはベ ンゾジアゼピンだけの問題ではなく同じことがバルビツール酸系催眠薬やブロム剤や 1869 年にイギリスに導入された包水クロラールという薬でも起こっていました。

@5

先ほど「善意の陰謀」の話をしましたが、ここで再びその話題に戻 りましょう。私たちみんなが薬がよく効いてくれることを望みすぎるあまり、薬が効いて いると信じ込んでしまうのです。その結果、危険対益(risk and benefit)関係の評価に歪 んだ判断を下してしまいます。私達は薬の効果を期待しすぎるばかりに、危険性の要因に 対して目を背けてしまいます。しかしこれらの薬を使う人が増えれば増えるほど、危険性 もどんどん増えてくるわけです。ですから、余り効果を期待できない相手に、薬(例えば、 強力なプラセボ程度の効果しかないもの)を処方するとすれば、それは僅かな利益を得る 可能性のために、患者を非常に重大な危険にさらすことになるのです。

@6

SSRI という用語がどの様にして生まれたか説明します。プ ロザックが市販されてから 5 年後に同種の薬の中でも代表的なパロキセチン☆☆☆(商品 名はパキシルとセロキサット)が発売されました。その時セルトラリン(sertraline:イギ リスの商品名はラストラル Lustral)というもう1つの代表的な抗うつ薬も採用されてい ました。しかし、この時点でパロキセチンのメーカーは、輝かしい名声をもつプロザック や有力なセルトラリンというライバルが既に存在する中で、一体どうやって市場参入を試 みるべきかと頭をひねっていたのでしょう。メーカーはパロキセチンによるセロトニン再 取り込み阻害作用の程度が高いから他の薬に比べて勝るという着想(ただし治療的な意義 があるという証拠はなかった)を有効に利用することにしました。そこで、当時パキシル のメーカーであったスミスクライン・ビーチャムは、SSRI という用語を考案し、パロキ セチンがプロザックやセルトラリンよりも優れているような暗示を与えようとしたので す。臨床上何も立証されてはいないのですが、これが市場参入のストーリーであり、いま だにこの話はそのまま皆に受け入れられているのです。

@7

FDA はその薬が有効であることを証明し市場に参入するために は、その薬がプラセボより有効であるということを示す二つの臨床試験を証拠として提出 するように要求しています。抗うつ薬はあまりよく効く薬ではありません。抗うつ薬の場 合、使用者の60%程度が反応を示すのですが、プラセボでも40%ぐらい反応が現れます。 ましては、アクティブ・プラセボ(薬理効果をもったプラセボのこと;例えば使用者になんらかの変化を感知させるため、口渇感を誘発程度の少量のアトロピンを含んだ偽薬)の ようなかなり強いプラセボを比較対照に使うと、測定可能な差は全く見られなくなります。 実際、コクラン共同計画の出した最近の再評価でも、アクティブ・プラセボと抗うつ薬の 効果との間に測定可能な違いはないという結論が得られました。ですから抗うつ剤薬のメ ーカーは、通常八つのプラセボ対照比較試験を実施して、その中から二つだけでも陽性結 果が得られることを期待するのです。当然ながらメーカーは陰性結果を公表したがりませ んし、驚くべきことに、規制当局もこれを容認して、すべての治験のメタ分析(訳註)に 基づいた薬効の評価はしていません。ヨーロッパではレボキセチン(メーカーはファルマ シアとファイザー)という薬が市販されていますが、アメリカで認可を受けるべく8つの プラセボ対照比較試験を行いました。その結果、有効という結果をだしたのは 1 つだったため、アメリカでの許可は下りなかったのです。しかしながら、ヨーロッパの規制当局に とってはこの結果で十分だったため、1997 年に許可されて以来、ヨーロッパでは広く使 われていますが、まだ米国では認可がされておりません。

@8

あなたが車を購入する際、8回 のうち1回か2回だけしかエンジンがかからないかもしれないなどと予想することがあり ますか?そんな馬鹿げた事はありません。でも、もしそれが現実なら、それを受け入れる 以外方法はありません。効果があるということはどういうことなのか、検証してみましょ う。“効果的”という表現が「一部の人々にとっては、ときに良く効くことがある」とい う意味ならば、最初からそう言えばいいのです。あたかも、薬は常に効いて無害であると いった誤解を与える“効果的”というグローバルな表現は止めた方がいいのではないでし ょうか。きちんとした情報に基づいて処方する医者(informed prescriber)なら、薬の有効 性は利益と潜在的な害の間のバランスで決まるということを理解していると思います。薬 の効果が低下すれば、定義上は、それだけ害の部分が増大するわけです。ですから、薬剤 の安全性を考える場合、これを薬の有効性や実効性と切り離して考慮することはできない のです。

@9

このスライドにある抗うつ薬に関する資料を見てみると – 推測 される効果は約 60 %で、それからプラセボの効果 40 %を引いた数値(20 %)が真の有 効性となります。つまり、抗うつ薬の危険対益を考えると、この薬が真に有効なのは5人 中1人に過ぎないというだけでなく、残りの5人中4人の幸福についても考える必要があ ります。この4人の人たちは、薬の恩恵を受けるたった1人のために、どのような危険に 曝されることになるのでしょうか。これは非常に難しい問題であると同時に、とても重要 な課題でもあると思います。

@10

ここ数年にわたってたくさんの製薬会社の 内部文書を調査してきた結果、分かったことがあります。すなわちこれらの報告書を読ん で彼らが一番気にかけることは、問題の原因と結果を調査することなどではなく、どのよ うに宣伝すれば医師の心配を和らげることができるかということなのです。製薬会社はど ういうメッセージに医師が好意的に反応するかとか、特有のメッセージや広告に対する人 々の反応の違いは何かということを、何十億ドルもかけて調査するのです。ですから、これらの薬が深刻な精神疾患の徴候を引き起こしていることを認識しているにもかかわら ず、それを調査せずにいることはなおさら許されないことだと思うのです。

@11

次のスライド では同じことが指摘されていてベンゾジアゼピンで起きたことを思い起こします。「私は 受診するたびに、この薬を止めると気分が悪いと言いましたが、それは不安症状が再発しているからだと言われました。」と。何度も何度も何百年もの間、同じ過ちが繰り返され ているわけですから、ここには何か根深い問題があるに違いありません。医学は変わらな くてはいけません。インターネットの出現と医学の大々的な民主化によって、医学は変わって行くはずです。

@12

薬の評価 現在、薬の安全性と有効性の評価は、主として臨床試験の結果に基づいて行われており
ます。それは規制当局がそうしているからです。規制当局は薬が認可される前に、製薬会 社が実施する臨床試験の結果を評価し、その後市販後調査としての医薬品副作用監視を行 います。そこで指摘したい点が、薬の安全性と有効性の評価のために行う市販前調査と市 販後調査という二つのプロセスについてです。ここで問題となることは、規制当局が約 70 %の努力を市販の前に傾注することが、“科学的”だと考えていることです。私は反対に、 実生活における薬の有益性を確立するために、市販後調査にもっと時間を掛けるべきだと 思います。しかしイエローカードの有害事象の報告の多数は、非科学的であるとか “逸 話的”であるという理由で、薬事規制のこの側面が無視されることが多いわけです。

@13

SSRI 系抗うつ薬では、すべての人に共通なただ1つの推奨用量を設 けております。これは全くばかげたことです。メーカーのデータを見れば、フルオキセチ ン(プロザック)を使っている人の約半分が、必要量の 4 倍を服用させられていることが 分かります。なぜならメーカーは、52 %の人が5mgの用量で効果を示すと確証してい るにも関わらず、割って服用できない 20mg 錠剤やカプセルだけを製造しているのですか ら。市場戦略のために、“フリーサイズ”の投与量がすべての人に適量であるようなこと がまかり通っているのです。我々はそうではなく、個人の反応の微妙な違いを考えなくて はいけません。このようなメーカーの姿勢を見ていると、そのうち薬物医学は自滅してし まうのではないかという懸念さえ持ってしまいます。医学の進歩により、薬物反応に対す る微妙な個人差という点において、様々なことが明らかになってきました。一方、製薬業 界が発展して成長するには、大量市場に供給する必要が出てきました。このように販売す れば、医師は投与量を暗記する必要がなくなるので、都合の良い販売促進の手段となりま す。医師は患者さんに、「1日1回飲んでください。」と言えばよいだけです。これがな ぜ今プロザックやセロキサットのような薬が問題になっているかの重要な要因の一つで す。一体明日はどんな問題が起きるでしょうか。しかし実際は、どんな問題が起きるかと いうことより、今私たちが何らかの行動を起こさなければ確実に次の問題が起きてしまう ということの方が、重要な問題なのです。

@14

医学がより民主 的な事業として発展するには何が必要かを整理するために、つぎのスライドを用意しまし た。科学者が考えている「役に立つ」知識と、普通の人が考えている「役に立つ」知識を ここで比較してみました。例えば、もし51%以上の確立でなにか私に悪いことが起きる 危険性があるなら、私はそれが何であるか突き止めたいし、またその危険を減らすか防止 するため何らかの行動を起こします。しかし現状の制度では、規制当局はその危険性が存 在することすら私に教えてくれません。あなたは心配しなくていいからただ医師を信頼して 言われるとおりにしてくれればいいと、思っています。その結果危険性の確立が95%以 上になって初めて警告を受けます。これもやはり善意の陰謀だと思いませんか。楽観主義 により私達は薬の効きめについて際限もなく過大評価をし、明確な薬害の証拠がない限り 薬の危険性に関してはかなり過小評価しようとするのです。企業や規制当局は、このよう な危険性に対する“科学的な”警告をする必要性を認める前に、あと何人の犠牲者を出せば気が済むのでしょう。

@15

そしてここで重要な課題に入りますが、医薬 政策の中で本当に私達は、これほどまでに新薬開発に力を注いでほしいと思っているので しょうか?それとも既存の薬を今よりももっと賢く使う方法を考案すべきなのでしょう か?これらの疑問は、世界がグローバル化へ向けて突進している現在ほど、重要さを増す ある一つの潜在する問題を浮き彫りにします。その問題とは商業上の必要事項と、健康上 の必要事項の間の根深い軋轢に関係があります。製薬会社としては新薬を開発しなければ 成り立っていかないため、より多くの人に新薬の方が旧薬よりも優れているということを 信じてもらわない限り激しい競争を生き抜くことはできません。この状況にもまた「善意の陰謀」が反映されています。体調が優れない人、または体調の優れない人を知人に持っ ている人なら誰でも新薬を切望するでしょう。 ― 現在 18,000 にも及ぶ疾病が効果的 な治療を必要としている事実を見れば、新薬の開発に投資するのは当然なことです。しか し私が聞きたいことは、何を置いても新薬の開発を最優先させるほど、本当に私達はそれ を必要としているのでしょうか。そして更に踏み込んで尋ねるならば、このように極めて 重要な社会問題の解決を、大手製薬会社や市場勢力に一任してしまってよいのでしょう か?
4 種類の新薬のうちの 1 種類だけが本当の意味で何らかの進歩がある新薬であるとする なら、この1種類の有用な新薬を(“有用な”を再度強調しますが)売り出すためにかか る費用は、40 億から 50 億ドルです。これはメーカーが出している見積もりです。しかし 2000 年のアフリカの医薬品市場の総額が 53 億ドル相当であるときに、これは道理にかな っているといえるでしょうか。もし1つの有用な新薬を開発する費用が、アフリカ大陸全 域で一年間に消費された薬物治療費に匹敵するのであれば、新薬の開発は最大の医療ニー ズのある地域を対象とすべきだというのが、第二の提案です。ここにあるリストの中で、 私が何時間でも話すことができる課題は、この秘密主義の問題です。しかし今は、医学の 分野における秘密主義は根深く、国防総省さえ透けて見えるほどだというにとどめておき ましょう。入手可能な証拠とデータの全て(それは膨大な量の資料ですが)を以ってして も、本物の証拠を見つけ出すことはできません。ここで“本物”の証拠というのは、薬の もつ利益・危険性・害に関して、知識と情報に基づいた結論を導き出すのに有意義な証拠 と言う意味です。8 件の臨床試験を実施してそのうち1~2件の結果だけに基づいて薬が “有効である”というのであれば、私達が知るべき情報は明らかにもっと多いはずです。 秘密主義は不当であり、他の業界やどんな職業でも決して許されることではありません。

抜粋ここまで

この講演が2005年。そして今、17年後の2022年です。確かにインターネットにより私たち患者が繋がりやすく、そして声を上げやすくなりましたが、それ以上に製薬会社の力が強まっている気がするのは私だけでしょうか?
政府や医師にもはや製薬業界の暴走を止める力はなく、私達一般庶民が情報を集め自衛するしかないような気もします。
執筆者:立川くるみ

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