「え?Webにもバリアフリーなんてものがあるの?」と思われた方もいるかもしれませんね。
はい、あるんです。
しかし、その世界に詳しい人達の間ではもっぱら「アクセシビリティー」という言葉が使われています。これは「近付きやすさ・アクセスのしやすさ」を意味します。
以後、バリアフリーではなく、このアクセシビリティという言葉を使っていきます。
と、いうのも業界ではこちらのほうがメジャーなので。
さて、Webの世界で最もアクセス困難な人達はスクリーンリーダー(画面読み上げ機能・ソフト)ユーザーではないかと思います。
「え? 何それ?」と思われた方でもしプロの方がいたとしたら、即座に勉強して欲しいと思います。プロでなくてもやっぱり知ってほしいです。
え? 偉そう? しかし、この知識は必ずや役に立つでしょう。
だって、一部の人しかアクセスできない不完全なものより、みんながアクセスできるサイトの方がクライアントに喜ばれるでしょうから。
さて、次にアクセス困難な人たちは以下の人たちではないでしょうか。
視力低下。光過敏などで見ることに困難な人、もしくは色覚多様性で一般の人と見え方の違う人たち、レイアウトを理解しにくい発達障害者や高齢者など。
こういった人達皆がアクセスしやすいサイトが理想なわけです。
さて私自身、自分と違う属性の方々とチームを組んでアクセシビリティー診断業務を行うこともありますが、スクリーンリーダーユーザーの立場からの違憲はもちろん、アクセシビリティ業界でもあまり知られていない「動く光・強い光への過敏性」を持つ立場からもここにみなさまに訴えると共に解決策・おとしどころを提案したいと思います。
画面読み上げユーザーがアクセスしやすいサイトとは?
まず、WEB最弱者であろうスクリーンリーダーユーザーの立場からオーソドックスな問題を上げていきます。
単純に言うと、まずHTMLの基本ルールに基づいてつくられたサイトであることが大切です。
HTMLの知識が多少ある方ならお分かりいただけると思いますが、見た目で問題なくとも、ソース的に問題のあるサイトはダメです。
何故なら、画面読み上げ機能はもっぱら見た目の情報ではなく、ソースの方を読んで音声に変換しているからであり、検索においても不利になります。
しかし、対策はそれほど難しいことではないので、以下に具体的に上げていきます。
画像に代替テキストを入れてください
サイトに画像を入れる場合、その画像ファイルの名称が読み上げられることが多いですが、ALTタグを使ってある程度の文字数の説明文を入れることができます。
ただし、キャプションで代用することも可能です。
ALTとキャプションの違いはその文字が目で確認できるかどうかの違いです。
つまり、ALTではスクリーンリーダーユーザーにしかその文章が認識できません。
これは、あまり重要でない画像なら入ってないほうが良いですが、肝心の決定ボタンや他のページに行くバナーリンクに入ってないことが多く散見されます。どうか、重要な画像には代替テキストの入力をお願いします。
なお、TwitterやFacebookにもこの代替テキストを入れる機能がついています。
見出しを適度に入れてください
特に本文の先頭には必ず見出しを入れて欲しいと思います。
これは、画面読み上げユーザーが見出しごとにジャンプして「読み飛ばし」を行っていることが多いためです。
なので、私達の間では「見出しジャンプ」という言葉が当たり前のように使われています。
これが入っていないと、メニューのリンクやどうでもいい部分をいちいち全て聞くハメになり、膨大な時間が奪われます。
ただし、最近のサイトはページの先頭に「コンテンツにジャンプ」といった隠しボタンがあり、コンテンツ(本文)先頭に見出しがなくてもジャンプできるようになっているものが多いです。
しかし、ある程度下まで読んでから本文の先頭に行きたい場合にはこの機能だけだとちょっと心もとないです。
やはり本文の先頭に見出し1か2が入ってると助かります。
理由はこの見出しの数字を押すとその見出しごとに移動できるため、本文先頭に戻りたい場合はシフト+1(シフトは逆戻りになる)を押すことで本文先頭に戻ったりするからです。
見出しに改行や空白を入れないでください
見た目を整えるためにこのようなことをするケースが見受けられますが、これを行うと、CMSが自動で改行もしくは空白の前後にそれぞれ見出しタグを作ってしまいます。
つまり、1つの見出しなのに複数の見出しになってしまうのです。
これは、スクリーンリーダーユーザーにとって不便なだけでなく、htmlの記述方としても問題です。
見た目通りの順番で読み上げられるように記述してください
時折、見た目の順番と読み上げの順番が違うものが見られます。これは眼を併用しながらスクリーンリーダーを使う人にとって大変不便です。他、タブレット端末やMacのトラックパッドコマンダーを使用する際にたまに見られるのが、表示の位置とスクリーンリーダーの対応位置が違うといったものです。これはユーザーが何度もサイトを行き来することで最終的には慣れますが、アクセスの難易度を上げます。
以上、代表的なものを上げました。他、細かい部分はありますが、要は音で上から順番に読んだときに理解できる構成か? 適度に読み飛ばし可能か? が重要です。
ロービジョン者への対応
適度にコントラストを出しつつもほどほどに
視覚障害にも様々ありますが、ビジュアル面で配慮に入れて欲しいのは、やはり視力障害者、色覚マイノリティー、光過敏者への対応かと思います。
視力障害者向けにはやはりコントラストの大きなものが好まれます。しかし、コントラストを出しすぎると、今度は一部の光過敏者に刺激が強すぎる結果となり、その人たちが見られなくなってしまいます。
例えば、視覚障害業界では常識となっているのが「白黒反転画面が良い」というものです。
そのため、視覚障害関連サイトでは最初から白黒反転デカ文字表示にされているものがあります。
つまり、白黒反転はより文字が目立ち、浮き立って見えることから、視力障害者にとってより見やすくなるのです。また、光の総量が抑えられて、まぶしくないという意見もあります。
ところが私には白黒反転は即座に眼を背けたくなるほどのまぶしさを感じます。また、デカ文字も視点移動距離が増えてしんどくなります。余談ですが、軽症時代はA4の書類をA5にプリントアウトしたり段組み表示して行の長さを短くしました。デカ文字よりも小さい文字の方が、一度にたくさんの文字を読みとり易くなるという点では視野障害者も同様と言えます。
つまり、デカ文字が良いというのも視力障害者向けのものであり、遅れて国から視覚障害者認定された視野障害者や、いまだ認定されていない光過敏者(眼球使用困難者の一部)の意見はまだあまり浸透していないということです。
不用意に動く光は入れないでください
次にやはり「動く光が見られない者」の存在です。
私をはじめとする光過敏者の中には、動く光を目に入れるだけで苦しむ者がいます。
私に関して言うと、弱点の身体部位を押されで「ギャー!」と飛び上がるような感覚でしょうか。
私がこれについて声を出し始めると、案外視力・視野の視覚障害者からも同意見の声が聞かれました。
彼らの言い分はゆっくり見ていたいのに勝手に画面が動くといったものです。
そう、もし、画面を動かすとしたらユーザーの意志で動くようにしてもらいたいです。私も画面を動かすシーンは目を閉じ、止まったら目を開けるといったことをしています。
ただ、動く光に弱い光過敏者にとっては動く光すべてが苦しみを伴うものです。
そのため、スクロールしたらワンテンポ遅れて動く、いつでも点滅やゆらゆら揺れている。背景がゆっくりスクロールしているといったものは本当に苦しく、それらがあるだけで画面非表示にするか、可能ならブラウザをPC画面から外したり手で隠さねばならなくなります。
動画解説など、それがあることで多くの人にとってわかりやすい情報をお届けするといった目的なら分かりますが、上にあげた動画演出ってそれほど重要でしょうか? 単なるオシャレさや、より目立たせる目的での動画演出って一部の人たちを切り捨ててまで行うほどのものでしょうか?
どうか、不用意に動く光を入れないサイト作りをお願いします。
この「動く光がNG」という点に関してはまだアクセシビリティ業界や視覚障害サポート業界全てに共有されているわけではないので、私がその第一人者とも言えましょう。そういったことから、従来のアクセシビリティ記事では不十分であること、また、多少はウェブを作る立場として、この記事を書き記させていただきました。
Webバリアフリー・アクセシビリティに関してはまだ細かい部分があります。是非、「情報バリアフリーをなくし、誰もがアクセスできるものを!」と思われる方、アクセシビリティで検索し、この概念を取りいれていただけると幸いです。
アクセシビリティ診断請け負い先
前章までは「お願い姿勢」で書いてきましたが、この章では少々強気に書かせてもらいます。
というのも、特にスクリーンリーダー対応が不完全なサイトが多く、私たち当事者が業者に改善要求をお願いすることがあまりに多いからです。どこがどのように問題かを説明し、再現動画を作成して送る、相手がようやく理解し、対応を試みた結果、その動作検証をまたお願いされる…。それでも解決しない…といったかたちで膨大な時間が割かれるのです。
確かに改善をお願いしたのはこちらですが、よくよく考えたら、制作業者が不完全なものを出してるからこちらがそれを指摘してあげたとも言えませんか? なんでこんなに時間と労力割くハメになってるんですか? 制作者はその対応時間も報酬を得ているのにこっちは無償なんですけど???
と、いうわけで、多くの視覚障害者が業者にフィードバックをしているわけですが、業者さん! 本来ならそちらで完成させねばならないものをこちらが無償で対応しているのですよ!
社内の誰かがスクリーンリーダーをマスターし、動作検証するか、それが無理なら外部に有償で委託して完成品として問題ないものを世に出してください! お願いします! ついでに国にも訴えたいですがそれはおいおい…。
しかし、そもそも「国に言われてはじめて対応」ではちょっと、意地が悪すぎませんか? この問題に興味のない方…。すでにこの問題に自分から取り組まれている制作者の方はいるのです。というか、ここまで読み進めていただいた方は皆、バリアフリー・アクセシビリティに興味のある方ですね。大変失礼しましたm(__)m.
ここまで読んでいただけたことに感謝します。
【追記】この記事を書いたわずか数日後の5月25日に障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法なるものが公布・施行されたことが分かりました!
事業者向けのものは以下の通りです。
第五条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、障害者がその必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができるようにするよう努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策に協力するよう努めなければならない。
第七条 国、地方公共団体、事業者その他の関係者は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策が効率的かつ効果的に推進されるよう、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。
また、この法における障害者の定義は障害者基本法と同様で
身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
となっています。視覚障害支援業界では何故か「視覚障害者=視覚障害者手帳保持者に限定」と勘違いされてる方が多いですが、各法により障害者の定義は違います。今回の法含め、障害者総合支援法、読書バリアフリー法、障害年金法、道路交通法等でも手帳の有無は問われていないこともここに追記しておきます。
最後に私の所属するアクセシビリティ診断業者を上げておきます。よかったら仕事ください(^_^)
・サニーバンク
さまざまな属性を持つ当事者がチームで診断に当たります。
・苦Lookワークス
私立川くるみの個人事業先です。
執筆者 立川くるみ(みんなで勝ち取る眼球困難フロンティアの会代表)